アメージンググレイス
彼岸になったせいか日の入りが短くなって暗くなるのが早まった。コオロギ君は心なしか寂しげ。これから少しづつ寒くなると思うとイヤになるけれど、毎年のことなので気を引き締める。
庭の彼岸花はやっと伸びてきて明後日あたり咲きそう。ずいぶん遅かった。なんてことない自然現象ではあるけど、単身者にとっては花鳥風月は友だからね。若い頃はあまり関心なくて花々に目は向いても気持ちまでは向かなかった。それだけ齢を重ねた証拠。
街なかの路上でジャズフェスが開催されていたんですが、定番ともいえるゴスペルの歌声を拝聴していて、ふと初めてアメージンググレイスを耳にしたのはいつだったかと記憶をまさぐってみた。
ケルティックウーマンの歌声だとクリスマスっぽい。
SF映画「スター・トレック」の何番目かでバルカン星人であるミスタースポック(レオナード・ニモイ)が反物質貯蔵庫に入らざるえない事態におちいる。「一人の幸福より、多数の幸福が優先する」というような辞世の言葉を最後に息をひきとる。
「そして永遠の別れ」
半透明なカプセルにミスタースポックの遺体は収められて漆黒の宇宙空間に放出された。そのときにかけられたのがバグパイプ演奏のアメージンググレイス。
これは賛美歌の一種なんだろうが、どこか懐かしくて荘厳さを伴った美しいメロディー。スコットランド付近の民謡をアレンジしたにちがいない。そのように感じた。
これです。ジェリー・ゴールドスミスのサントラ。
「スタートレックII カーンの逆襲」
制作1982年。古典だよねえ。
生まれて初めてアメージンググレイスに接したのは映画「スタートレック2」の葬送シーン。まだほとんど日本では認知されてなかったとおもう。なんていう歌なのかわからずじまいであったが心に引っかった。歌の名前を知ったのはその後しばらくしてのち。
わたしはスタートレックのファンなので映画は封切り時にロードショーですべて視聴。映画はドラマのときと違って大がかかりで圧倒。一本目の巨匠監督ロバート・ワイズの力量がものをいった。アクターズスタジオ・インタビューにて製作時の苦労話を披露していたが、台本もなにもしっちゃかめっちゃかで完成するのか監督さえ疑心暗記だったという。
この歌は奴隷売買にかかわった作者が船の上で嵐にあったときの心模様を綴ったものらしい。ということはそうとう昔につくられた歌。
現在の社会を奴隷商人が見たら自分たちの非業に腰を抜かすかもしれないが、未来の人間が現在の社会をみたら逆の意味で驚愕するはず。こんなに動植物をいじめて罪の意識をもたないとは21世紀初頭の人間はなんて野蛮なんだとさげすまれる。
近未来人の視点で現在の社会をながめれば、現在だってアメージンググレイス時代と大差ないじゃん。と見られるにちがいない。
日本人が歌うゴスペルって歌自体はとても上手で素晴らしいのだけれども、歌ってる善男善女はクリスチャンなんだろうかと疑問におもってきた。べつに歌うだけなので信者である理由は不要かもしれないが気になる。仲間と練習を重ねるうちにカトリックやプロテスタントなどに興味を抱いて信仰の道にすすむ者だっているであろう。
感化されやすい体質なのでそういうものには深入りせずに生きてきた。っていうか怠惰っていう事情が大きい。このビョウキは不治なのでこのままいくしかあるまい。
「神さま」
「お許しください」