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ミニマリスト

猫のつぶやき :: 生きてるだけで尊くありがたい

スニフの焼き芋

ヒューっていう聞き慣れぬ音。
路地に出てみればスニフがリヤカーを引いてる。
荷台に積んであるのは煙突つきドラム缶。

「いいところに来た。ムーミン
「収穫したばかりのサツマイモ。焼いて販売してるから買ってよ」
「一個百円」

音の正体は煙突から立ち上る蒸気。
さきっぽに笛をくっつけたとはアイディア。
とぼけてるようで商売上手のスニフ。

クンクン。
焼き芋の香り。
これ自分で作ったのかい。

「五右衛門風呂を改造してね」
「自慢はやっぱり音が出る部分」
「見てくれは悪いけど廃物利用だから材料費はタダ」
「もの珍らしさが手伝ってわりに繁盛してるんだ」
「売れ切れまじか」

三本購入。
新聞紙に包んでくれた。
冷めないうちにパパとママにもっていってあげようっと。

書斎のイスに座って執筆中のパパ。
パイプをふかしながら原稿を丸めてポイ。
ゴミ箱はボツ原稿でいっぱい。
いつもの仕草に笑っちゃう。

「ナイスショット」

そこにいたのか。ムーミン
どうも煮詰まって筆がすすまんのじゃよ。
気分転換するところだったのでちょうどいい。

「完成したらまっさきにボクに見せてくれる約束だったね」

う、うん。

生返事したはいいが、構想は浮かぶものの具体的な
形におとすところで難渋。こんなふうにだらしない
親の姿を子供にみられるのは不甲斐ない。

一応、表向きの仕事は小説家として通っているが、
永遠の未完成これ完成なりの状態。
せめて威厳だけはつくろわなくてはならん。

ご先祖さまは甲斐性があったので残してくれた
財産で当面は食う心配せずにすむ。
これがもし、世間から白い目でみられるとすれば、
どうにかしなくてはいけない。

幸いムーミン谷の住人は優しくてよかった。

「この芋はスニフがね」
「あいつはドジのようで目先は利くんだ」

子供なのにしっかり稼ぐとは。偉い。
目のつけどころがシャープ。
どっかで耳にしたセリフだな。
たしかに目の付け所がシャープで失敗をおそれない。

ワシの書いた小説なんで海のものとも山のものとも
つくかどうか心もとない。それにひきかえスニフは。
ワシは誰に向けて文章を書いてるのか。自信喪失。
いったいニーズはあるのだろうか。

イモのように口に入るものを狙ったほうがよさそう。
スニフのリヤカーを後ろから押して歩きたいほどだ。

いや。まてまて。

焼きイモでも蒸かしイモでも自分で作ればイモ代金のみ。
芋そのものだって空きスペースがあれば栽培するのは簡単。
栽培や調理がめんどうな怠け者がいるから商売は成立。
誰かの役に立つって一体!?。

署長さんだって悪人がいるから必要な役割。
悪い人間がいなければ不要ではないか。

商売って他人の代わりに何かをしてあげるに過ぎない。
親切でもあれば、余計なお世話かもしれない。
なくてはならないかもしれないし、ないほうが幸せかもしれない。

じゃあ。小説家の役割とはどの辺にあるのかしら。

焼き芋だって食べなくとも全然支障ない。
ほかに食べ物がないとすれば必需品となりえるけれど。

芋を自作するひとはそこらにゴロゴロしてるが、
小説を自作してるひとはまれ。めったにおめにかかれない。
ひとはなんのために小説を読むのだろう。

ワシはなんで小説が書きたいのか。

自分のことなのに自分でもわからない。
もしかして、わからないから好奇心がうずくのかな。
じゃあ。
ワシが小説を読む理由はどこにある。
だいたい理由なんて考えたことすらない。
小説家を自認する自分自身がそんな体たらく。

そこらをムーミンがほじくりださぬことを望む。

ここで方向転換したら家族はどうおもう。
もう悩むだけ悩んだからぶり返すのはよそう。
あうでもないこうでもないとウジウジ。
父親らしくないではないか。

そうだ。ヒントは目の前。

事件が起きれば、ネタが生まれる。
あまりに平和だから小説の材料にことかいてしまう。
ちがう。ノーノー。平和だから小説の出番。
考えちがいもはなはだしい。もう発想が貧困でいやになる。

どれどれ。
焼きイモの包み紙の新聞には何と書いてある。

ヘムレンさんが新種の蝶を発見だと。
虫取り網を立ててポーズを決めておる。
のほほんとした毒にも薬にもならん話題ばかり。

「パパ。ハロウィンの準備するね」
「オレンジのカボチャ。用意してくれた」

もうそんな季節。

ワシも子供時代は楽しみじゃった。
それがどうだ。
いまや20代の若者までハロウィンに浮かれておる。
たしかに仮装して町に繰り出すのはワクワクするが、
本来の意味がもぬけのからというのはどうもけしからん。

否定的にとらえるから行動力がにぶる。
新しい魅力に知恵をしぼるのがワシの仕事。
コメントは他のひとにまかせればよい。
説教とは、わるいクセ。

それより、ママやムーミンと一緒に参加すれば思い出になる。
どういう仮面をつけてどんな衣装を身にまとおう。
あれこれ思案してコミットしたほうが生産的。

黒のシルクハットから三角帽子にチェンジ。
太めの魔法使いでは今ひとつ説得力に欠ける。
ハロウィンまでにダイエットしてみんなを驚かしてやろう。

ミッキーマウス魔法使いの弟子
未熟なマジシャンがヘマをやらかしてハプニングになる筋書き。
魔術をあなどったむくいを思い知るミッキー。

かぼちゃを馬車に仕立て、ネズミの御者。シンデレラ。
夜12時になれば魔法はとけて現実にもどる。あくまで制限付き。
ウォルト・ディズニーって琴線にピクピクひびく。

オレンジパンプキンは気分を盛り上げる重要アイテム。
いたずらに理屈はいらぬ。

秘密のサプライズはえ〜と。ヨシ。
全身の細胞が活性化してきた。
自分で自分に魔法をかける。自己暗示。

楽しければすべてよし。

ムーミン谷のおくりもの

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