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守破離::1Q59

幸福とはココロの状態にある

審判の日

雨降り具合によっては社内にこもるときもあるにはある。
朝から晩まで同じ建物で仕事するのに堪えられない。
せめて昼間だけは外の空気を吸いたい。

他の方々はそんなに気にしないようだ。
雪の日に外に出ようとしたら、となりの同僚から
「こんな日ぐらい、中で食べたらどう、一緒に食べよう」。
言われてしまったが、これはボクの習性なので
曖昧な返事をしてささっと急ぐ。

かなりの変人に思われてるに相違ない。
実際、変人なので周囲に合わせるつもりは毛頭なし。
一分でも一秒でも仕事場から離れたい。
なるべく遠くまで全速力で歩く。
距離が仕事場から遠くなればなるほど安心する。

どうみても変人だ。
しっかり自覚しているが、性格なのでどうしようもない。
誰にも害を与えないからほっといてくれる。

小さい公園に到着。
ベンチにはうっすら雪が積もってる。座れない。
どっか休む場所はえ〜と。
ボタ雪になってきた。体は冷える。
いつも「ネコ男」がいるのだが、さすがに見当たらない。

野良猫とじゃれるのが日課らしく、雨降りの日は
あずまやでなにやら過ごしている。
スケッチブックに絵を描いてるときもある。
いまだに声をかけそびれているが
そのうちきっかけはくるだろう。

齢の頃は40前後。
自転車でやってくる。
足を引きずってるから障害者かもしれない。

以前は公園でランチすることはなくて
飲食店の日替わり定食などを食べていた。
毎日スパゲティーにしてたときもある。

メインは和食。
ご飯に味噌汁に焼き魚か煮魚でもあれば満足。
自分で弁当をこしらえるなんて考えもしなかった。
それに弁当を持参するのは恥ずかしい。

近頃は昼の時間を節約するために
簡単な自作弁当を公園で食べる。
これだと時間に余裕がもてる。

別の公園に電話ボックスがあったな。
あれならそばだし雪と風をしのげる。
そそくさと移動してドアからなかにはいる。

外気が遮断されて温かい。
グルっと360度がガラスなので開放感。
布製バッグから食料を取り出して立ち食い。
わるくないな。天候不順のときに重宝しそう。
通行人はまばらだから気兼ねいらず。

繁華街であればペタペタとエッチカード満載だが
そういうのっていまだに健在なんだろうか。

騒音は入ってこない。
都会の隅にあるナイススポットだ。
早く気づけばよかったなあ。

「ポン」

ん。屋根からなにか音がする。
すこし間をおいてまた「ポン」
なんだこの音は。

上空を見上げれば樹木になにやら実がなってる。
あれが落っこちてるんだ。
なんとも風流。風情がある。
ドングリでもないし、何の実なのか不明。
またもや「ポン」。

となりのトトロ」みたい。
サツキとメイの姉妹が生みだした妖精。

お父さんの帰りをバス停に立って待つ。
トトロの葉っぱ雨よけにドングリが落ちる。
そんなような場面があったとおもう。

未舗装の地面むきだし道路は泥だらけ。
姉妹がさしてるのは布張り傘。
バスはなかなかやってこない。
ぐずる妹を姉がなだめる。
心細い。

木の実が落下するところの雰囲気は似てる。
狭い電話ボックス。誰かと一緒ならなあ。
ひとりなのが寂しい。

「あなたは神のホニャララ」という演説が流れてくる。
ここ最近、あちこちでよく耳にする。
神さまの街宣車が通り過ぎていった。

背中にバッテリーとアンプをくくりつけて棒の先に拡声器。
なんともヘンテコリンな宣教者が街角にいたりしたが
最後にみかけたのはいつだろう。
神の小冊子を配布するために駆り出された子供。
どこか異様な光景なのだが、かれらにしてみれば、
神の使いなのだから一点の曇りもなかろう。

ターミネーターのごとく審判の日が接近してるんだろうか。
ここにサラ・コナーがいれば遠方に南下するのだが。
ぶら下がってる電話帳に彼女の名はあるかしら。
どれどれ。「サ」のページ。

「ルルルル」
「ルルルル」
ありゃあ。なんで公衆電話が鳴るわけ。
間違い電話がかかってきてるようだ。
どうすればいい。
受話器を取ろうか、無視しようか。

「もしもし」
「あたしあたし」
「ねえ」

君は、もしかしてサラなの。
伝説の女サラ・コナーが掛けてくるとは。
こんな場所を探しあてるなんて。神のお導き。
今ね。君のナンバーをチェックしてた。

「なにいってんの」
「あんた誰」

ジョンじゃなくてカイル、カイル・リース。
待っていたよ。サラ。
食事は済んだからいつでも出かけられる。

「カイルって」
ターミネーターの登場人物」
「まさかなあ」

運命の出会い。
ボクは君を守るために全力をつくす。
失うものはなにもない。

「どこにいるの」
「直に話そう」
「そっち行くから」
「危ない人じゃないよね」

ガチャン。切れた。
サラがこちらへやってくる。
なんだか胸騒ぎ。
乗りかかった船。途中で引き返せない。

雪は止んでお日様が射してきた。
かすかに蒸気がのぼり、葉っぱのしずくがキラリ。

コンピューターが意思(意志)を持つ日は訪れるだろうか。
おそらく意思の部分は植え付け可能になっても
装着しないことだろう。

強固な意思というのは自分で目標設定して、
できうるかぎりの手段を用いて目標達成に邁進。

目標そのものが間違いだったり、狂っていれば
とんでもない事態を招いてしまう。
アドルフ・ヒットラーは意思の人だった。
まったくブレずに仕事をやりとげた。

具体的な目標設定。

これを明確に可視化してやるのは人間の役目。
組織であれば、リーダーの仕事。
いついつまでに、なになにを成し遂げる。
目標を階層にわけて大小ブレークダウン。
あとはどういうふうな手段を用いれば適切か
手段ごとに予算見積りすればいい。

ターミネーターの場合。

手段は選ばず、しゃにむにターゲット抹殺。
予算もへちまもあったもんじゃない。
壊れるまで徹底的にやりぬく。

マシンが勝利したとする。
人間の排除は平和のためというより異質を排除。
世界がマシンで埋め尽くされればどうなる。
またもや終わりなき戦いが繰りかえされる。

サラ・コナー家族は逃げるしか手はない。
ひたすらどこまでもエスケープ。
頑強で執拗なストーカーに追いまくられる。

まともに話せる相手とはちがう。
かかわった者はみんなダメージを受ける。
ボクは、サラと家族を守りきれるだろうか。
そんなふうに考えてはいけない。
ささやかでいたらなくとも、やれるだけのことを果たす。
明日は来るのか。明日はあるのか。

「神の意思」にしたがって生きる人々。
熱心な信者さんに意思はあるんだろうか。
意思なんて持たないほうがラクに生きられる。
長いものにグルグル巻きにされた状態。

考えるだけ無駄。考えるのはよそう。

「はじめまして」
「さっき電話に出た人でしょう」
「知らない人が出たので驚いた」
「兄はどこかしら」

お兄さん!?。
猫好きの男性でしょうか。
今日は姿を見ておりません。
いつもはニャンコとまみれてるのに。
天候のせいでお休みかと思ってました。
どこに行ったのかなあ。

「兄は携帯電話を持ってないの」
「公衆電話のそばにいるんじゃないかと」
「すいません」
「サラ・コナーではなくて」
「ふふふ」

いえ、こちらこそ大人げない対応。
偶然、キリスト教の宣伝カーが通りかかって、
ふいにジェームズ・キャメロン監督による映画が浮かび
ターミネーターに出てくる審判の日を思いだした。
そしたら電話が鳴って仰天。

「なるほど〜」
「運命の出会いだと勘違い」
「物語の始まりみたい」

せっかくだから明日にでも、お茶を飲みませんか!?。
ボクはこういうものですと言いたいが、
昼なので名刺は机のなか。

「あたしも映画はダイスキ」
タイタニックのサントラ」
セリーヌ・ディオン
「水平に両腕を広げて」
「歌を口ずさむの」

今宵は久々のデート。
なんだか胸がときめくというかドキドキ。
彼女のお兄さんはいつものように猫とじゃれてる。

本日は快晴、ランチ終了してベンチに仰向け。
常緑樹の枝葉が風にそよぐ。
腕時計を気にしながら目を閉じる。

「ニャア」

レンギョウの茂みに白いのが一匹。
ゴメンなあ。おかず。なにも残ってなくてさあ。

お兄さ〜ん。あのお。

 

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