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ミニマリスト

猫のつぶやき :: 生きてるだけで尊くありがたい

ナスになった女

創作

ナス柄のワンピースが似合う。
英語では茄子をエッグプラントというらしい。

細長いのや丸いのや大きのや小さいのと色々ある。
どちらかといえば薄味で歯ごたえを楽しむ脇役。
栄養価はほとんどゼロに近い。

いてもいなくとも困らないが愛嬌のせいで起用。
野菜界のなかで独特の位置をキープ。

全身ナスの着ぐるみまでハンドメイド。
ゆるキャラみたい。
真ん丸あたりはどうやって作成したのだろう。
どんな素材で製作時間はどれぐらい。

思いついたらすぐに取りかかる性格。

とにかく作ってみて、試してみて、反応をたしかめる。
観客ではただの消費者だから受身である。
見た目はモデルっぽい大人容姿なのだが、なかみは
イタズラ盛りの小学生のノリそのまま。

リングに上がって参加する姿勢はすばらしい。

小学生どころか黄色い帽子をかぶった幼稚園児かもしれない。
普通の人ならば包み隠してしまい、いつのまにやら忘れちゃう
はずの部分。幼心をしっかり着脱できるところが二重丸。

でも、そういうタイプが自分の居場所を確保するのは
とても難しい。イジメのターゲットにされたり、排除されたり
苦しい立場におかれるので、大人の知恵を覚えてしまい
どこにでもいる普通の大人に成長する。

社会はナスのままでいることを容認してくれない。

「これからブルックリン橋に行くんだけど」
「ふたりでどうお」
メグ・ライアンロビン・ウィリアムズがね」
「それぞれ橋から飛び込んだでしょう」

まさか、真似しよっていうんじゃあ。
そんなの勘弁してよ。
きっと足が震えて動けなくなるに決まってる。
防護ネットだってあるはず。
考え直して。ねえ。

「NO」
「ナスの格好で記念撮影したい」
「メリーポピンズみたいに傘をさして」
「ただそれだけ」

メグはジャンプした途端にタイムスリップ。
時間の裂け目に吸収されてヒュー・ジャックマン扮する
ニューヨーク貴族と結ばれてハッピーエンド。
ロビンの場合は悲しい結末とあいなった。

ナスは、無邪気で罪がないというか天真爛漫というか。
言いだしたら意地でも押し通す。
きっとなんらかのサプライズを準備してる。

ロビンは落語家の桂枝雀と同様の末路をたどった。
天才コメディアンのプレッシャーは相当なものがあったろう。
天賦の才とは無縁の凡人でよかった。

おふたりは人を笑わす仕事を職業に選んだのに
ファンの期待をものの見事に裏切る去就。
最後の最後までバカ見本を演じてほしかった。

外野がブーたれてどうなるものでなし。
そこだけは他山の石とせねば。
いくら頑張ろうと無為だろうとラストは訪れる。
なにもあえて自分から引き寄せるにはおよばず。
天命にしたがえばよろしい。

「うん」
「そんなこと言ってくれるのはあんただけ」
「誰でも分かってるけど」
「面と向かって話されるとジンとくる」
「ついて行きそうになる」

そんなつもりで言ったんじゃなくて
自分に言い聞かせてるだけ。
勘違いすんなよ。

「分かってる」
「分かってるって」
「ナスを認めてくれるだけで満足」
「ピンクの花が開いちゃうかも」

ナスは素直だからな。
まずチェルシーのデリでコーヒー飲もう。
しかし、ロビンみたいなのは映像としていつまでも残る。
画面のなかで本人は生きている。

生きているように錯覚してしまう。
写真ならば画像は静止してるうえに音声は記録されて
いないので、映像のような臨場感はおぼえない。

どちらも情報記録による魔法。

写真は瞬間が切り取られ、映画は時間が保存される。
生身のロビンは映画のなかで遭遇するだけなので
かれがこの世にいようがいまいが鑑賞者にとって不都合はない。

縁もゆかりもない米国人の俳優にすぎないのだから
特別の思い入れはあろうはずはない。

それなのに心のどこかに彼の存在を感じる時がある。
ロビン・ウィリアムズという名前はしっかりと心に刻まれている。
なぜだか忘れられない。
爆笑にヒューマニズムに毒舌に悲嘆に希望のブレンド。
一方通行の片思いであってもなにかしらの縁を感じてしまう。

「不思議だよねえ」
チャップリンだって同じ」
「影響を受けてるんだよ」
「ってことはさ」

なんだい。

「意志を受けつがなくちゃ」
「それで彼らはあたしらの心に出没する」
「違うかな」
「縁を生かして欲しがってる」

うまいこと仰っしゃるなあ。
じゃあさあ。
彼らはコメンディアンだよね。それも超一流の。
ただ単に笑いを振りまいたわけではない。
なにかしらのメッセージが託されてる。
そうは思わない。

「暗号解読みたいね」
シャーロック・ホームズ気分」
「あたしはワトソン役」
「難しいパズルほどハッスル」

ところでドイツパン食べよう。
ずしりと重たいのを薄くスライスして焼いてもらおう。
それに腹持ちするベーグル。
朝から飲み物ばかりで何も口にほうりこんでない。
お腹ペコペコ。

「賛成」
「ブルックリンブリッジはいつでもいける」
チェルシーはギャラリースポット」
「刺激されるから闘志メラメラ」
「自然に食欲倍増」

ほんとなあ。
中身はともかくアピール力には舌をまく。
米国式絶倫とでも呼べばいいのか。
へこたれれば即ノックアウト。退場。
非常にわかりやすいルール。

単純明快でない欧州に嫌気がさして新天地に
単純明快を求め、移民としてアメリカにやってきた。
なにが善でなにが悪か明確に2分割される。
判断材料は強いか弱いか。
そして金銭数量の多寡。
デジタルビットのパルス信号そのもの。
ON・OFFだけで構成された世界。

ハードディスク内部では、乾電池の+ーのように
磁化されたビットが眠っている。
ビットは通信経路をたどりナノ秒単位に高速処理。
人間が解読できるアナログドット図形に変換して完了。

目には見えないブラックボックス
中間のグレーゾーンは無視されてしまう。

ナスはIT方面と両刀使いだよね。
お金に困ればプログラマーとして稼ぐ。
それも高度な科学技術計算系が得意技。

「得意ってわけじゃないけど」
「背に腹は代えられないから」
「素早くマネーチェンジ可能」
「芸は身を助ける」
「それだけじゃあ」

どうしようもない。
既存の意味世界にどっぷりでは社会の歯車。
グレーゾーンをナスなりに拡張というか遊びたい。
中途半端でなく徹底的にやりつくす。
意味をぶっ潰してやりたい。

「過激でしょう」
「あくまで作品上だから」
アナキストでもない」

他者を組織したり巻き込んだりするノウハウ。
どこかで学んだの!?。

「独自メソッド」
「走りながら改造していった」
「ウェブブラウザのアドオンが参考」
「プログラム言語へ翻訳する」
「手を動かしてトライ&エラーの繰り返し」
「USAの人はニューフロンティア大好き」
「誰もやってないことに価値を見出す」

失敗をおそれないものね。
失敗は成功のもと。成功は失敗のもと。
成功と失敗の相互サイクル。
決定するのは意識の琴線。

スポーツだって勝ったり負けたりの連続。
勝負事と異なるのはルールは自分自身。
だれか特定の相手と競うわけではない。

独自の世界観の背後にはデジタル見識があって
ハイクオリティーなナス料理を生み出す。
なんともいえない自己顕示に魅了される。

「そんなに持ち上げないで」
「かいかぶり」
「好きなように遊ぶには工夫必要」
「たんなる極道なんだから」

「色づいたイチョウ落ち葉」
「足で蹴りながら歩くと気持ちいい」
「あら、つむじ風」

なかに飛び込もう。ほら。はやく。

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