守破離::1Q59

幸福とはココロの状態にある

レッドリボンの影法師

敏子が泣きを入れてきたのはいいが、
心情を察してこっちまでもらい泣きする始末。

尊敬して好きで一緒になったとはいえ
ガラッとひとが変わってしまえばめんどうみるのはつらい。
すがたかたちは昔のままでも内面は別人だものな。

ソロバン弾いてハイサヨナラするような敏子じゃない。
未来は常にリスクをはらんでいる。
予定外の出来事はあたりまえ。
先々を思い悩むのは人間のならい。
すべて投げ出してリセットすればその場はしのげるが
それでは女がすたる。

まあ。クヨクヨしてもどうにもなんねえ。
やれるだけのことを精一杯やればいい。

太郎のクチグセはあんたも承知だろう。

困難な道と安易な道の選択にせまられたとき
すすんで困難な道を歩めとね。
つらい毎日だっていつかは終わる。
隣りの芝生は青々と繁げる。

こっちが何を言っても耳に入るわけはない。

幼稚園の遊具みたいなオブジェ。
あういうのを多作したのは、母であるかの子に甘えることも
かなわず、子供らしさを母に阻害されたからにちがいない。
童心を抑圧した岡本かの子の罪。

家族模様は他人には伺いしれない。

「グラスのなかに顔があってもいいじゃないか」

自分のしかめっ面にこだわったフシがある。
大阪万博太陽の塔しかり。
自分が主役でないと気がすまない性格。

ウイスキーグラスの底に太郎が居座ってる。
酒の飲む方にしてみれば、迷惑だぜ。
妙齢の女性ならば気楽でいいが、どういうつもりなのか。

このグラスを持ってくるあたりが敏子ならでは。
秘書兼奥方として太郎を支え続けている。

ひとをその気にさせるアジテーションが得意だったが、
敏子が添削して心をくすぐるようにメンテナンス。
ほとんどの文筆は合作というより名前は太郎でも
実際は敏子フォントが充実していたせい。

それにしても稀有で変わり者。

芸術は反人真似が基本。先人の亜流はご法度。
なんらかの認知度の高いハクが必要。
打ち上げ花火のごとく派手なクレジットというか
ポートフォリオとして機能しなくてはならない。

製作するには資金がいるし、継続するのはさらに大変。
アーティスト専業をあきらめて美術学校の教師をやって
くいぶちをかせげば、そのまま教職で有終をかざる。

ひとに頭を下げるなんて死んでもイヤな太郎。
ずいぶんと生活に困窮したが楽観主義でしのいだ。
なにより敏子の内助の功につきる。

芸術家のプライドってものはしょうもないというか。
心のなかにひそむ見栄だよね。
芸術家でなくとも肉体労働者には肉体労働者なりの
プライドがある。誇りといいかえることもできる。

かたくなに固まって、お願いしたり、謝ることができなくて
最悪ケースに発展する事例はよくある。

「実るほど、頭(こうべ)を垂れる稲穂かな」

なんて言葉があるけれどもね。
年齢がうえになればなるほど頭を下げるのは平気になる。
子育て関与の有無というのが大きいかもね。

なにをしでかすか分からないのが子供。
やらかしたことに親は責任をとらなくてはいけない。
すくなくとも謝罪したりすることには慣れる。

アバンギャルドな初期作品 「傷ましき腕」

異様に大きな赤リボンの顔。机のうえにはくのじの腕と握りこぶし。
世間に受け入れられない情念とでもいうかな。
最後まで世間に迎合するのをこばんだ一貫性。
自意識過剰な青年はわかるけど、
赤いリボンは何を意味してるんだろう。

ほんとうは自顔を描き込みたかったが、
自画像ではまずいと考えなおしてレッドリボンに修正したかもね。
腕に巻いてるのは包帯で、包帯が赤いのは血がにじんでるとすれば
赤リボンはナースの象徴。赤リボンは優しく手当してくれる看護婦さん。

前衛といえばきこえはいいが、屈折した自己完結とでもいうか。
凡人の理解を拒否するバリヤーがあるようだ。
まあ、理解して利益があるとは思えんがな。
自分で自分に縄をゆってジタバタもがいてるみたい。
これって真性マゾ!?。

勝手な想像してわるかった。

なにはともあれ。昭和の雰囲気。
戦争の傷跡が生々しい名残りだとおもわれる。
最後の最後まで戦争の面影をひきずっていた昭和時代。
いまになってふりかえってみれば感じる。

戦地では、上官にさからってだいぶ殴られたらしい。
空気を読めなくて世渡り下手なのでイジメの標的。
よくぞ生還したものよ。

007のジェームズボンドシリーズ。

悪役に捕まって拷問にかけられる諜報部員ダニエル・クレイグ
自白を強要されていたぶられるが、意にかえさない。
あきれたことに局部まで打ってくれと言い出す。

イスに座らされて責められる場面。
映画「マトリックス」にもあった。
救世主としてネオ・アンダーソンをあがめる先輩が
スプリンクラーの放水でずぶ濡れになりながら
エージェント・スミスにねちっこくイジメられる。

苦しみもがきつつ、わずかなスキを探る。
どうにかピンチをチャンスに変えて窮地を逃れたい。
いつしか不可能条件を自分に課すように変貌。
最悪状態から起死回生にもっていく快感を覚える。

マラソンランナーとか冒険家とか千日回峰行者みたいにね。
一度味わうとやみつきになって何度もトライしたくなるか、
もう二度とゴメンこうむりたいかは色々。
自慢の種としてひとをひきつける大輪花火。

度を越した「マゾ」だからスパイは務まる。

岡本太郎はスパイになればよかったのに。
トップリーダーの資質としてマゾスキルは必須。
なんてふうにマゾを推薦してる方まで存在。

そこのあなた。
マゾを馬鹿にしてたでしょう。
もちろん、ただの単純マゾでは使えないけどね。

日本男性の間にブラックスーツが浸透したのは
マトリックス以後だと思われる。

黒の衣装を着用するのは特別の機会にかぎられていた。
満員電車にゆられて行き着く職場や盛り場まで
おおぜいのブラック。影響されやすいというか。おかしな現象。

日本にやってくる外国人には奇異に映るという。
かくいう自分もそのうちの一人。
黒一色で肩が凝らないのかしらねえ。
もんであげるからさあ。こっち来て。

仕事ができると思われたい願望のあらわれ。
スマートしかもソツなく戦闘モードでワーキング。

誰か一人がやりだせば。ボクもついていかなくちゃ。
やめられないとまらない。やめたいけどやめられない。
ガマン大会いかなくちゃ。もっともっと。もっともっと。
早く速くやらなくちゃ。乗り遅れちゃおしまい。
いま何時。あと何分。気になる気になる。時間が気になる。

なんか即席の歌が口をついてでる。

じゃあ。ここらでお開きにしよう。
気を取り直して、考えてどうなるものでなし。
アポなんかいらんからいつでもこいや。

東の夜空を見上げてごらん。
オリオン座流星群が確認できるやもしれん。
 

美の呪力 (新潮文庫)

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