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ミニマリスト

猫のつぶやき :: 生きてるだけで尊くありがたい

幸福の青い鳥

創作

何によって救われるかなんて神のみぞ知る。

無人島に流れ着いて一人ぼっちになりながら懸命にサイバルできたのは、
恋人の写真が入るペンダントと羽イラストの宅急便のおかげ。

現実の居場所は島の外へにある。

「どうしても戻らねば」

このまま孤島で魚を捕まえ、たくましくロビンソンクルーソーとして
朽ち果てるのはいやだ。

ヤシの樹皮を刻んでカレンダー代わりにするが
一向に救助があられる気配はない。
ここでは時間なんて意味をもたない。

「社会との接点。約束遂行のため」に時間というものは必要になる。
たとえ時計が動作しても使い道はない。
きわめてお金にちかいのが時間の正体なのだ。

とうとう自分で島から脱出することを決意。

ありあわせの粗末なボロを集めてイカダを作成。

仲間とはぐれたET(地球外生命体)の場合。
宇宙船までは手作りできないから仲間をよびだすための
通信機を自作したっけな。

それにしても夜空にキラキラ輝く満天の星。
寝転んで宙をみあげる。
どれがなんていう星座なのか。

ギリシャ神話の神さまだよね。
自分は射手座。たしか胴体半分と四本足は馬。その他は人間。
弓で矢を引いて的をねらってるんだよね。

モリで魚をつけるようになったのは射手座のせい。
まさかそれはないだろうが。

サアッと流れ星。

あいつはいまごろどうしてるかなあ。
頬を伝う涙を手でぬぐう。
ちゃんと生きてる証拠だ。

どうにか奇跡的に古巣へもどれた。

恋人は結婚しており、以前の運送屋の仕事への情熱は失せていた。
これから何をして生きていけばいいのやら。
途方にくれる。

知り合いはどこかよそよそしく、以前の職場に復帰しょうと
いう気持ちが起こらない。失われた年数というものは冷酷で
分刻みで時間に追われるビジネスに違和感をおぼえる。

裸同然で誰にはばかることのない島での生活。

あっちの方が現実であったのではないだろうか。
なにがなんだがわからなくなる。
世界中の現場をまわってたシステムエンジニアの仕事。

寝る間を惜しんで夢中でコードを書いたりした。

いかに個々の仕事を切れ目なくスムーズにコネクトするか。
人の手をわずらわせるのは極力おさえて、エラーの原因を排除する。

一回作成した短いコードは使い捨てなくて再利用。
自社でアプリケーションをまかなっていたから、なるべくシンプルで
メンテナスしやすいというのを心がけていた。

アウトソーシングすれば、コード量で価格が決まる。
あるいはかかった時間見積りなどの工数。

創意工夫などは技術者の良心と技能にまかせられる。
設計まで外注すれば迷惑をこうむるだけでなくて、結局は
ぜんぶ外注先におまかせのような依存状態になってしまう。

あれだけ真剣に取り組んでいた自分。

企業内部の仕組みに精通して、所属企業じたいが自身の
延長で自分がいるから会社が動いているとうぬぼれていた。

IT技術者が経営者として力を発揮できるのは
分離されたIT部門のトップにおさまるのが早い。
仕事は親会社から安定的にもらえるから、苦手な営業で苦労することはない。

ずっと頑張ってきたご褒美みたいなものだが、実際は、本社での
キャリアパスは用意されていないから、現場を離れた隠居。

とりとめない心象スケッチが心をよぎる。
もうどうでもいい過去。

島で生き延びて、脱出に成功したのは、

「意志のたまもの」につきる。

見ないものを見えるように可視化。
融通のまったくきかないコンピューターに作業手順を移植してきた。


「明確な意識を継続して成り立つ」

唯一、カムバックする上で役立ったのは意志だとおもう。
そうなのだ。

いくら不慮の出来事に遭遇しても意志さえあればなんとかできる。
それになんかならなくとも、なんとかしようと躍起にはげむ
プロセスが重要だとおもう。

孤立無援の絶海孤島で学んだのは
原因と結果をあれやこれやとシュミレートするクセからの脱却。
考えるだけもいけないし、考えないのもいけない。

何年にもわたる自由時間はムダではなかった。

あの経験はすでに前世。生かしてやる必要がある。
生かしてやらなければもったいない。
すでにあのときの自分ではない。
組織に所属する給与所得者でもない。

自分は現実主義者なのでスピリチュアルとは縁はうすいけど
次元上昇=アセッションに見舞われたのだ。

あのときをおもえば、怖いものはないに等しい。

社会で生きるには誰かとコミットする必要がある。
自分の手で触れられる具体的な生身の対象。
未来は不確定であるから生きるに値する。
以前の仕事は、未知のチャレンジの連続だったから夢中になれた。

飽きやすい性格の自分があれだけ長続きできたのは
ITというソフト開発の仕事にめぐりあえたから。

しかし、もういいやと深層心理はアラームを発している。

「ピコンピコン」

きっと体の組成が変化して自然体を取り戻したせい。
おなじような生き方をすれば、どうなるかは目にみえている。
けれども、どこでなにに着手すればいいのやら見当もつかない。

だが、この状態はとても心地いい。

島に流れ着いたときの心境にちかい。
ザワワ、ザワワという潮の満ち引きで目がさめた。
ひとりひとりになにがしかの神の配剤というか思し召しが
あらわれる時期がある。

いくら熱心に信仰なる対象をもっていても
いつどこかは誰にも分からない。

ひとにできるのは、限られているとはいえ、生きるというのは
誰か顔がみえる特定の相手と関係をむすぶこと。
ひとりでも生きられないことはないが、ひとりで生きていても
楽しみ喜びや苦しみ悲しみを共有不能。

なんでひとりぼっちが続くとつらいのか。

しだいにつらいのを通り越して絶望感まで増幅。
身内や仲間がいるうちは、ありがたみに気づかない。

孤立無援の気持ちは痛いほど体験させてもらった。
待っていても援軍はこない。

幸福や不幸やチャンスの種はそこらじゅうに充満している。

持ち帰ったゴミ同然の宅急便を遠方まで配達にでかける。
依頼主は留守。
感謝のメモを荷物に貼り、玄関先において、家を後にする。

炎天下、何もない十字路で道に迷い地図を広げる。
運よく通りかかった車が停車。

あっちはカナダ、こっちはどこそこと教えてくれる。

「グットラック カーボウイ」と女の運転手。

別れの言葉をのこして走りさる車。
後ろには、羽のマークが描かれていた。

映画「キャストアウェイ」。
 

キャスト・アウェイ [DVD]

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主演トム・ハンクスに監督ロバート・ゼメキスにサントラは
アラン・シルヴェストリという豪華メンバーで構成。